診療科・医師紹介

関節外来

関節センターを新設しました

当院は、全員が40歳以上の整形外科専門医3名(奥村理事長、武田整形部長、松本医長)が股関節や膝関節の治療を専門的に行っています。

関節センター長は、洛陽病院の理事長である奥村先生です。先生は京都大学時代から40年間以上も、人工股関節の開発に携わりながら治療しており、手術後の左右の脚長差もミリ単位までこだわって手術をしています。また、治療の難しい症例、再手術症例も京都大学の関連病院や他の病院からよく相談されます。古希ですが現役バリバリの関節外科医で、3人の中で一番元気でタフです。

実際の治療内容は、

股関節の領域は・・・
臼蓋不全に対して棚形成術や臼蓋側回転骨切り術(RAO)
変形の高度なものには人工股関節全置換術
高齢者の骨接合術や人工骨頭置換術
膝関節の領域は・・・
半月板損傷には半月板部分切除術・縫合術
変形の高度なものには人工膝関節置換術
新鮮な前十字靱帯損傷に対しては接着術

当院の人工股関節手術の特徴としては、できるだけ

  • 最小侵襲手術(MIS)を行っている
  • 骨セメントを使わない人工股関節を使用
  • 適応年齢が40歳代から80歳代までと幅広い
  • 各個人に適した人工関節の種類(機種・骨頭サイズ)を選んでいる
  • 貧血の無い人は自己血輸血で手術をしている

などで、自己血については術前貯血と、術中~術後の回収血を使用しているので、ほとんどの症例が自分の血液だけで手術が可能です。 但し、もともと貧血が強い方は術後に同種血輸血(献血した血液)が必要になることがあります。

最新の人工股関節手術の開始

2013年( 平成25年 )1月から、最新の人工股関節手術( デルタ )を開始しました。セラミックの受け( カップ )とセラミックのボール( 骨頭 )の組み合わせからなる人工股関節です。今まで使用してきたアルミナセラミックから、新規のジルコニアセラミックに改良された。
新しいジルコニアセラミックは、(1)以前のアルミナセラミックよりも強度が強く、破損が起きない、(2)以前のアルミナセラミックよりも摩耗が少ない、(3)32mm直径の大きい骨頭が使えて、脱臼が生じにくい、などの特徴があります。これらの特徴から、比較的若い患者さんに安心して使用できます。ヨーロッパで開発されて、すでに10年以上の実績があります。今年、ようやく厚労省の認可を得て、臨床に使用できるようになりました。洛陽病院では、10年以上まえから、アルミナセラミックの人工股関節の手術をしてきましたが、今年から、性能がさらに良くなったジルコニアセラミック( デルタ )の人工股関節の手術を開始しました。

当院で使用している人工股関節
  • 40歳~60歳と若い人には左の写真のようなエースクラップ社の人工関節を使用しています。上からカップ、ライナー、骨頭、ステムと呼びます。まず骨盤の臼蓋にセメントレスカップを挿入してネジ2本で固定します。次に大腿骨にセメントレス・ステムを挿入し、ライナーと骨頭を挿入します。実際に関節として動く部分であるライナーと骨頭には、現在一番滑りが良い(摩擦係数が低い)、セラミックを使用しています。

    60歳以上の人には主に3種類の機種を使用しています。まずは、最近日本でも使用され始めた、ジンマー社製のM/Lテーパーキネクティブステム(右写真)です。もともと大腿骨の骨頭中心は男女・個人差がありますが、この機種はステムの頚部が自由に取り替えられるので(下写真)、手術中に各個人に合った位置を再現できます。

  • 次はJMM社のAHFIXです(右・下写真)。この人工関節は表面に特殊なアルカリ処理をされていて、骨に接触すると新たな骨を造る作用があり、自分の骨と金属が強く結合して緩みにくくなるという特徴があります。さらに新しいポリエチレン(アクアラ)を使っています。これらのことで、人工関節の寿命が伸びます。

  • 最後は骨粗鬆症など骨が少し弱くなったやや高齢者に使う機種で、JMM社のS-LOCKです(下写真)。骨が弱いと、ステムを大腿骨に打ち込むだけでは金属と骨の固定性が悪くなります。それを補うためにステムの近位と遠位にそれぞれ2本ずつ、合計4本の横止めネジが入るように設計されています。再置換術の時にも使用します。

また、前述の3機種だけでは対応できない特殊な症例もあります。例えば、先天性股関節脱臼後で大腿骨の変形が高度な変形性股関節症や臼蓋が異常に破壊された症例です。このような症例には特殊な人工股関節(S-ROMシステム、K―Tプレートなど)を使用します。

K-T プレート

S-ROM

新しく、開始した、人工膝関節手術

新しく開始した人工膝関節 ( Genesis II、Smith and Nephew 社製 ) は、大腿骨側がセラミックの表面加工されていて (表面が黒色)、低摩耗の特徴をもっています。関節面の形状は、解剖学的な形状をしていて、膝関節運動がなめらかに できるようになっています。正確な手術手技により、長期の耐久性が得られます。

当院で使用している人工膝関節

Zimmer社のNexGen人工膝関節システムも使用しています。手術はできる限り最小侵襲手技(MIS)で行なっていますが、変形の高度な症例や元々の骨が大きい人は骨棘を切除して、十分な関節可動域ときれいな下肢の並び(外観)を獲得するために、普通の皮膚切開で行っています。

  • 左上写真が人工膝関節の全体像で、右上写真2枚は脛骨に挿入するモバイルタイプの機種です。
    膝を屈伸した時に筋肉のバランスで、膝が自然に回旋できるようにしているものです。

  • また変形の程度が強い症例は、上図の様な特殊な機種を使用します。これは、骨欠損を金属の楔やブロックで補填して挿入する人工関節で、安定性能を高めるためにステムが取り付けられます。

当院にはリハビリも回復期病棟があり、遠方からこられる患者様には納得できるまで、しっかり入院リハビリ(2~3ヶ月間)をして退院していただけますので、退院後のリハビリ通院は必要としていません。退院の目安としては跛行のない・きれいな歩容ですので、歩容が良ければ早く退院することも可能です。(入院期間は、個人差があります。急がれる患者様は、3~4週で退院されることもあります。)

手術後の日常生活では、

人工股関節置換術は・・・
靴下を履く動作
しゃがみこみ動作
正座(術前に可能な人)
階段昇降
自転車こぎ
人工膝関節は・・・・・
靴下を履く動作
階段昇降
自転車こぎ      を許可しています。

但し、退院後に何もしなくていいと言う訳ではなく、独自にプール歩行やゲートボール、ジムで筋肉トレーニングなど個人に合わせた日常生活・運動をして頂いています。

「人工関節の手術はどれくらいの費用がかかるんですか?」という質問をよく受けますが、当院では手術前に患者様の負担を少なくするために更生医療の手続きをしています。外来を初診して手術までには、自己血を1週間ごとに2~3回貯血(採血)するので、最短でも3週間はかかります。手続きは患者様か家族にして頂かないといけませんが、この間に急いで役所に行って頂ければ何とか入院までに間に合います。

症例供覧

次に代表的な症例を供覧致します。まずは人工膝関節(TKA)です。この手術は術後すぐに体重をかけられるよう、骨セメントを使用しています。

症例1 69歳 女性 両側の外反膝に対してTKA

まずは痛みと変形が強い右膝を手術し、最近左膝を手術

症例2 69歳 女性 高度の内反変形と骨欠損例

特殊なブロックで骨欠損を補填し、長いステムで安定性を獲得

次は人工股関節置換術(THA)です。全例初回手術は骨セメントを使用しません。手術は全て奥村理事長が執刀し、合計3名の医師で手術しますが、他の2名(武田、松本)も全員40歳を過ぎており、それぞれが他の病院では執刀医となれる関節外科専門医です。それでは当院で行っているTHA症例を紹介します。年齢と変形程度によって人工関節の機種、骨頭の大きさ・種類を変えています。

症例1 69歳 女性 変形性股関節症に対して左THA施行

ジンマー社製のM/Lテーパーキネクティブステム 径32mm骨頭(メタル)

症例2 52歳 女性 両側変形性股関節症 2回の手術施行

エースクラップ社のバイコンタクトステム 径28mm骨頭(セラミック)

症例3 69歳 女性 右股関節人工骨頭置換術後の緩みを再置換術

同種骨移植+K-Tプレート(骨セメント使用)+S―LOCK+大転子フック
+大腿骨短縮骨切り術  径28mm骨頭(メタル) 左側も再置換術予定

症例4 59歳 女性 左先天性股関節脱臼後 右側は大阪の大学病院で手術

S-ROMシステム+大腿骨短縮骨切り術 径28mm骨頭(メタル)

上記の右側の写真でもわかりますが、右股関節は骨盤と大腿骨の間にゆとりがなく、関節可動域が悪いです。
以上は平成22年に施行した症例の一部です。この他もほとんどが一筋縄ではいかないような、難しい症例ばかりです。

次に最近の症例を供覧します。

症例5 67歳 女性 外国(人工関節専門病院)で平成19年に両側のTHAを受け、術後4年で左側の臼蓋(骨とセメント間)が緩んで痛むため、当院で臼蓋側のみ再置換術

同種骨移植+K-Tプレート(骨セメント使用)  径28mm骨頭(メタル)

症例6 78歳 女性 最近には珍しい両側股関節変形+両側外反膝(X脚歩行)

術前レントゲン

まずは痛みと変形の強い右股関節をTHA

自家骨移植+S-ROMシステム+大腿骨短縮骨切り術 径28mm骨頭(メタル)

今後は7月に右膝のTKAを予定。
まずは右脚でしっかり立てるように支持脚を作り、左THA、左TKAと予定。

独り言

洛陽病院の手術の皮切は平均12cmです。近年、最小侵襲手術(8cmの皮切)が流行っていますが、当院では変形の高度なものや、先天的に骨形態異常のある人には適応していません。何故なら適確な位置に人工関節を設置することが出来ないからです。当然、無駄な組織の損傷を避けることはしていますが、適確な位置に人工関節を設置することは人工関節の寿命を伸ばすことにつながります。事実、奥村先生が執刀して術後25年~30年間再手術を必要としない人工股関節の症例を経験し、今も外来に遠方から通院されています。また、術後最悪の合併症である脱臼も、手術後に精神科疾患を発症した症例だけです。如何に適確な位置とバランスを獲得しながら手術をすることが大切かを学びました。また、感染例もありません。手術時間が短く、傷が小さくて、出血量が少ないのに越した事はありませんが、洛陽病院は脱臼や感染がなく長持ちする人工関節を出来る所です。一人でも関節が痛くて困っている人の役に立てたら幸いです。
今回たまたま外国で手術を受けて早期に緩みが発生した症例がありましたが、チャンレイという人工関節の話をする時に絶対に避けられない有名な先生の国です。専門病院で手術を受けているのに残念な結果となっていましたが、御本人はあまり詳しく説明を受けていなかったようです。いくら語学が堪能と言えど、やはり人種によって生活習慣や説明内容に違いがあるので、自分の国で手術をしたほうが良いように感じました。
ちなみに最後は手術中の写真です。まるで宇宙服の様ですが、バイオクリーンルームで自分たちの呼気が手術創や人工関節に当たらないように(呼気中の細菌が感染しないように)注意して手術をしています。